【あらすじ】

ストリートミュージシャンである従兄弟のウィリーを頼り、

単身ハンガリーからニューヨークへやって来た少女、エヴァ。

ウィリーの悪友エディとともに、見知らぬ都会で3人の若者たちの

奇妙な共同生活が始まった…。(amazonより)

→詳しいあらすじはこちら



【感想】

ジャームッシュの作品は『コーヒー&シガレッツ』しか

見たことがなく、しかもそれがかなり強烈だったため、

まずは彼が長編をどのように撮るのかということに興味津々。

で、蓋を開けてみれば、ワンシーンワンカットのスタイルで、

それぞれのシーンがそれぞれで独立しているような

それでいて不思議とつながっているような感じを受け、

妙になるほど~!と納得してしまった。


私は普段やっていることがやっていることなので、

映画とかを観ていてもつい構造だとか象徴性について足りない脳で

考えてしまうのだけど(底意地が悪いとも言う)、

そういう意味で、この作品はある程度までは追わせてくれるのに、

ある一点でふいっとかわされてしまうようなところがあって

何だか奇妙な感じを味わった。

でもそれ以上追う気にもならないんだよね。

この辺にジャームッシュという人の魅力はあるのかなあと思った。


好きなシーンは、クリーヴランドの伯母の家に住むエヴァを

訪ねたウィリーとエディが発つ前日に彼女に連れられ

地吹雪の吹き荒れるエリー湖に行くところ。

真っ白い画面の中に立つ3人のシルエットが絵になっていて

また雪が恋しくなった。

ウィリー、エヴァ、エディの三者三様のキャラクターの絡みは

車での移動中のやり取りやちょっとしたエピソードでも光っていて、

ベタベタしてない、けれども一筋縄ではいかない人間関係の描き方が

よいなあ、と思わされる。

後はデートで映画に誘われたエヴァにエディとウィリーが

ついていくエピソードと、頑固に英語を拒否する伯母さんが最後に

"son of a bitch!"と悪態をつくところがお気に入りかな。

是非見て欲しいシーン。


恒例のヒロイン語りw

エヴァは皆から愛されているのに誰のことも好きじゃないんだなあ、と思う。

まるで幸せそうに見えなかった。

この作品を"頽廃的"と言わしめるものがあるとしたら、

イカサマや競馬、TVディナーの生活を送るエディやウィリーの姿よりも

エヴァの存在の方大きかったのではないかなあ。

画面の中で一番モノクロームに馴染む、キュートではあるのだけど

美人という感じではない彼女に、私は目を奪われっぱなしだったと思う。


『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は全体として、

初期作ということでジャームッシュの持ち味である奇妙なムードが

全開な作品ではあったけれど、後から感想を書く今回観たもう一本の作品、

『ダウン・バイ・ロー』比べると不安感は少ないように思う。

更に『コーヒー&シガレッツ』なんかの突き抜けた感とかとも比べると、

やはり若さを感じた。とえらそうに言ってみる。自分小心者です。

あー後この人の作品の中でかかる音楽はリズムとか叩きなる

曲が多いなあと思った。


蛇足かつ今更な話なのかもしれないけど、

タイトルの「ストレンジャー」は「奇妙な」と「異邦人」という

意味が両方かかっているのかしら?うーん。